ミヤマ株式会社

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旧ピジョンポスト

ピジョンポスト Vol.16

2000.04.01

自動車エンジニアが視る環境の未来。

林教授とミヤマとのおつきあいは、管理職のためのマネジメント教育で講演をしていただいたことがきっかけです。工学博士であり社会心理学者でもある林教授は独自のマネジメント理論を展開され、当社におきましては「レースに学んだマネジメント」と題したエキサイティングな講演をして下さり、以来ミヤマ社内にも教授の熱烈なファン多数。 今回は日産のエースエンジニアとして高性能エンジンの開発から自動車における各種公害規制を解決していらした林教授にエンジニアから見た環境についてお話を伺いました。


hayashi.jpg 林義正氏プロフィール

1938年生まれ。62年日産自動車株式会社入社。中央研究所で高性能エンジン・排気浄化技術・騒音低減技術の研究を経てスポーツエンジン開発室室長として主にCカー開発に関わる。総合監督としてJSPC3連勝、日本車初のデイトナ24時間耐久レース優勝。主な受賞歴として日本機械学会賞、自動車技術会賞、科学技術庁長官賞などがある。東海大学工学部動力機械工学科教授。工学博士。

 

環境規制をもプラスに捉えて発展してきた日本の自動車産業。

 

-現在日本の基幹産業とも言える自動車産業ですが、先生が日産自動車株式会社に入社された1962年頃の自動車業界はどんな時代でしたか。

 

自動車といってもとにかく動けばいい、牛や馬よりちょっとマシという時代から、一発でエンジンがかかって故障しないで安心して乗れる車という時代に入った頃です。ところが高嶺の花じゃしょうがない。誰でも買える車。年収の半分位だったら買えそうだというのがひとつの常識ですが、当時のスバル360、マツダのクーペが36万円位で、エリート課長さんの年収が70万円。努力すれば手が届く。ダーッと売れました。次に求められたのは高性能。名神や東名高速ができ、鈴鹿や船橋サーキットが盛況を呈し、富士スピードウェイもできた。そうなるとレースやラリーに強い車に人気が集まり、朝日新聞でさえ高性能マシンのことを取り上げるほどでした。 

 

-まさに日本のモータリゼーションの幕開けという感じですね。ところが「公害問題」が起こり、高性能に加えて環境規制との戦いの時代に入ってゆくわけですね。

 

日本では1975年までに未燃焼炭化水素(HC)と一酸化炭素、78年までに窒素化合物を当時の1/10のレベルに削減という規制ができまして、これはアメリカのマスキーさんという人が1970年代に40年代の空を取り戻すというんで自動車に世界一厳しい規制をかけようとしたんですが、日本のメーカーはまたたく間にこれを征服してしまったんですね。アメリカがマスキー法をクリアしたのは1994年。なんと日本に遅れること16年。アメリカは排気規制で非関税障壁を求めようと思ったんでしょうが逆の結果になってしまいました。私も日産におりまして排気対策をやれと言われ、公害防止管理者の第一回目の資格試験を受けました。ブルーバードに2点着火エンジンを搭載して、急速燃焼という技術を導入して排気対策をクリアしました。ところが急速燃焼というのは騒音の高周波成分を増大させてしまうんです。 で、「騒音振動対策もお前がやれ」ということになってしまいまして、高剛性シリンダーブロックやら考えまして、騒音対策もうまくいきました。これは現在のほとんどのエンジンでも使われています。 

 

-その間の1973年、第一次オイルショックがあり、省燃費も自動車に求められていますが。

 

サウジアラビアの王様が石油の元栓を締めちゃったんですね。すると今度は燃費の良い車。また神風が吹いて日本がうまくいった。故障しなくて、安くて、高性能で、安全で、排気がきれいで、燃費が良くて、静かで、魅力のある車。世界中が日本車を求めないわけがありません。日本の自動車産業は環境規制をもプラスにとらえて発展してきました。

 

モータースポーツは自動車づくりの実験場。

 

-技術の発展という点におきましては、先生が開発されたCカーなどのモータースポーツは「技術の実験場」と言われていますが。

 

環境対策がうまくいって科学技術庁長官賞をいただいてやれやれと思っているところに、副社長から「今度はレースだ。3年後にシリーズチャンピオンを獲れ!」と言われまして、私モータースポーツなんて知らなかったんですヨ。Cカーっていうのはパリダカを走っているんだと思ってました。ところがやってみるとモータースポーツというのは自動車の基本的な機能をとことん追及したものなんですね。レースに勝つための5大条件というのがあるんですが、まず第一はレーシングチーム、次がエンジン、シャシー、ドライバー、タイヤと続きます。 自動車の部品は約3万点、エンジンだけで3千点以上を占めています。材料、機械、流体、熱の4つの力学をすべて使ってできるのがエンジンで自動車の心臓部なんですが、エンジンだけ良くても宝の持ち腐れなんです。持てるポテンシャルを100パーセント引き出さなくてはならない。そのためにはレースは自動づくりのためのすべての実験場であるわけです。その実験結果を市販車にシフトしてゆくんですね。 

 

-先生のご専門のエンジンは、ガソリンの持つ化学エネルギーを最大限に運動エネルギーに変換させる技術かと思いますが、石油資源の枯渇が大きな環境問題となっていますが。

 

石油資源がいつまで続くのかということに関しては諸説紛々ですが、埋蔵量に限りがあることは確かです。採掘の効率向上と使い方の工夫は必須ですが、同時に代替エネルギーの開発、例えば天然ガスやDME(ジメチルエーテル)燃料電池などがあり、決して悲観する必要はないと思っています。今まではガソリンエンジンが主流でしたが、これから先の動力はいろいろなものが混在し多国籍化すると思いますね。昨年「電気動力レーシングカーの性能解析」という研究論文を発表したんですが、内容はEVでルマンに勝てるかというものです。ある一定の条件を設定すればEVでポールポジションは獲れるんです。ということはインフラを含めて最適な条件で新エネルギーの車を使ってゆけば、より効率的な自動車社会ができるのです。

 

想像力は無限、未来を創るのは技術。

 

-エネルギー問題のほかにも自動車に課せられた環境課題はたくさんありますが、リサイクル、環境負荷物質の低減など目標を何年も前倒しで達成する予想がされています。なぜそのようなことができるのでしょうか。

 

1876年にエンジンができてから124年。これほど多くの技術者がよってたかって作り続けてきた代物はほかにはないと思います。私が排気対策をやった時、IIECという、まあ自動車業界の協同組合みたいなところでアメリカのフォードと共同研究をしたんですが、ダンゼン日本の技術が進んでいると思いました。案の定、排ガス規制も省エネも日本が一等賞。日本の自動車産業の持つ力というものは優秀な人材がたくさん集まっている点にあると思います。 環境ということに関しては今はブームとなっていて、なんでもかんでも環境をつければ関心を集めることができます。自動車廃止論を唱える学者が、環境はまことによいが不便な郊外の自宅からいろいろな理由をつけて車で平気で通勤する。また自分が地球によって生かされていることを忘れて「地球にやさしい何とか」と思い上がったことを言うこともあります。環境や公害、エネルギー問題は総論として理解していても、いざ自分のこととなるとエゴがでてしまう。これは人間の本性に基づくため、人類にとって永遠の課題ですね。 

 

-その課題をクリアすることはできないのでしょうか?

 

想像力と技術が解決してくれると思います。人間の想像力は無限です。課題はチャレンジを生み、解決と同時に次に飛躍するためのステップになります。まだまだ技術は無限だと思っていますから、技術があらゆる課題をクリアしてくれると信じています。 「技術は無限だ」優れた技術で次々と目的を達成し、輝かしい業績に裏打ちされた林教授にこう言い切っていただくと、分野は様々でもそれぞれの技術が未来を創ってゆくんだ、と改めて実感し、晴々とした気持ちにさせていただいたインタビューでした。
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